クムはテヘランから南へ約130kmに位置する、イスラム教シーア派の重要な聖地として知られる都市です。
五大産地の中でクムが特に興味深いのは、絨毯産地としての歴史が非常に新しいことです。クムにおける絨毯製作は、一般に1930年代半ばに始まったとされています。
近隣のカシャンなどから絨毯製作の技術が伝えられ、20世紀前半から産業として発展していきました。そのため、タブリーズやカシャンのように数百年にわたる絨毯産地としての歴史を持つ都市とは成り立ちが大きく異なります。
比較的新しい産地でありながら、イラン各地の伝統的な文様や技法を取り入れ、高度な織りの技術によって短期間のうちに世界的に知られる高級絨毯産地へと発展しました。
クム絨毯
クム絨毯の特徴
現在のクムを代表するもののひとつが、非常に細いシルクを用いた高密度の絨毯です。
初期には良質なウールを用いた絨毯も多く作られていましたが、その後シルクを部分的に使用した作品が現れ、さらにオールシルクの絨毯が発展しました。
シルクは細い糸で織ることができるため、花びらや蔓、人物、動物などの細部を細密画のように表現できます。中央メダリオン、シャー・アッバース文様、庭園文様、樹木、狩猟図、人物や動物など、そのデザインは非常に多岐にわたります。
クムは、ひとつの古典様式を何百年も守り続けてきた産地というより、イラン各地で培われてきた絨毯文化を取り込みながら、20世紀に独自の高級絨毯文化を築き上げた産地と見ることができます。