ナインは、もともと細やかな手仕事に長けた職人の町として、長い伝統を持っています。かつては、「アバヤ」と呼ばれるラクダの毛を原料とした男性用の手織りマントの産地として名声を得ていました。しかし、機械織りの布の普及や時代の変化によって、1920年頃には手織りマントの需要が大きく減少します。
その後、ナインの町は新たに絨毯産業へ力を入れるようになりました。手織りマントの制作によって培われてきた緻密な織りの技術は絨毯制作にも受け継がれ、職人たちは短期間のうちに高度な絨毯織りの技術を身につけていきます。こうしてナインは、精巧な織りと端正なデザインを備えた、高品質なペルシャ絨毯の産地として世界的に知られるようになりました。
ナイン絨毯は、イスファハン産の絨毯から強い影響を受けて発展したと考えられています。イスファハンは、シャー・アッバース1世によって1597年に首都とされ、サファヴィー朝を代表する芸術と工芸の中心地として栄えました。ナイン絨毯にも、イスファハン絨毯を思わせる中央のメダリオン、繊細な花唐草、均整の取れた構成などが多く取り入れられています。
その一方で、ナインは独自の美意識を築き上げました。特にアイボリーを基調に、水色や青を組み合わせた色彩は、ナイン絨毯を象徴する特徴です。繊細な文様と澄んだ青色が調和した作品には、ほかの産地にはない独自の美しさがあります。また、ナインを代表する歴史的建造物の一つに、町の中心に位置するジャーメ・モスクがあります。ナイン絨毯の中には、こうしたモスク建築を思わせる構成や意匠を取り入れた作品も見られます。