手織り絨毯の製造工程

手織り絨毯の製造工程

ヴィンテージラグとは

絨毯は、単なる敷物ではなく、素材・技法・文化・歴史が融合した伝統工芸です。
ここでは、伝統的な手織り絨毯がどのように作られているのか、その全工程を詳しくご紹介します。

1. 原材料の準備

シェアリング

STEP1:シェアリング(毛刈り)
手織り絨毯の大部分は「羊毛(ウール)」で作られます。春または秋に羊の毛を刈り取り、異物(草、土、枯葉など)を手で丁寧に取り除きます。高品質な絨毯には、柔らかく光沢のある「初刈りウール」などが使われます。

カーディング

STEP2:カーディング(梳毛)
刈り取ったウールは「カーディング」と呼ばれる工程で繊維を梳きほぐし、滑らかに整えます。これにより糸にしやすくなり、織りあがりも美しくなります。

スピニング

STEP3:スピニング(紡績)
カーディングされた繊維は撚りをかけて糸(ヤーン)にします。
Z撚り:時計回りに撚った糸
S撚り:反時計回りに撚った糸
用途や地域によって撚りの向きや強さが異なります。時に2本以上の糸を合わせて太い糸にする「撚り合わせ(plying)」も行われます。

2.染色(ダイイング)

染料

STEP1:糸を染料に浸ける
サフラン(黄色)、石・インディゴ(青)、茜の根(赤)、クルミの殻(茶)などが天然染料として使用されます。近年では合成染料が安価で普及しており、色は鮮やかに発色します。

大釜

STEP2:染料を定着させる
大釜に大量の染料と水を入れます。90℃前後の熱を加えながら染料を定着させます。

自然乾燥

STEP3:太陽の下で自然乾燥
染めあがった糸を外で乾かします。約2〜3日程かけて完全に乾燥させれば糸の完成です。

3.織り

織機

STEP1:織機(ルーム)の設置
織機には大きく分けて二つの種類があります。 「垂直式織機(ヴァーティカルルーム)」は定住型の織機で、主に都市部で使われています。構造がしっかりしており、繊細な文様や高度な織りに向いています。 一方、「水平式織機(ホリゾンタルルーム)」は、遊牧民が使う移動式の織機です。地面の近くに設置できる簡素な構造で、実用的な織りに適しています。

ノット

STEP2:結び(ノット)の作業
絨毯の文様はすべて「ノット」と呼ばれる小さな結び目で構成されています。織り手は設計図(カルトゥーン)に従い、1本1本手で糸を結びつけていきます。
→ ノットについて詳しくはこちら

パイルとデザイン

STEP3:パイルとデザイン
ノットの端糸が「パイル(毛足)」となり、これが絨毯の表面を形成します。ノット数が多く高密度な絨毯は、文様が緻密になります。反対にノット数が粗めの絨毯は素朴で柔らかい風合いになります。

4. 仕上げと洗浄

洗浄

STEP1:洗浄
絨毯を平らに広げ、水と天然洗剤を使って洗い、繊維の奥の染料・汚れを除去します。木の板で水を押し出すようにして洗い、水を切った後、天日干しします。

補強

STEP2:サイドの補強
コイル巻きまたは縫製で強化します。

補強

STEP3:エンド(フリンジ)の補強
編み込みや結びでほつれ防止。伝統的なペルシャ絨毯ではフリンジとボーダーの間にサインが見られることもあります。

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