タブリーズ絨毯について|歴史・デザイン・ラジ・タブロー

タブリーズ絨毯について

タブリーズ絨毯


タブリーズはイラン北西部に位置する東アゼルバイジャン州の州都で、古くから東西交易の要衝として発展してきた歴史ある都市です。タブリーズ絨毯もまた、ペルシャ絨毯の中でも長い歴史を持つものの一つで、多彩なデザインと高度な織りの技術によって知られています。

ヨーロッパを思わせる優雅な花文様から、コーカサス地方とのつながりを感じさせる幾何学文様、さらには絵画のような「タブロー」まで、タブリーズほど幅広い表現を見ることのできる産地は多くありません。このページでは、タブリーズの歴史と文化、絨毯の特徴、織りの細かさを表す「ラジ」、そしてタブローについてご紹介します。

01. タブリーズという町

タブリーズはイラン北西部、トルコ国境に比較的近い場所に位置する都市で、東アゼルバイジャン州の州都です。古くからシルクロードを通じた東西交易の重要な拠点として栄えてきました。

タブリーズを象徴する場所の一つが、ユネスコ世界遺産にも登録されている「タブリーズのバザール」です。中東でも特に長い歴史を持ち、世界でも有数の規模を誇る商業施設として知られています。

1275年頃にタブリーズを訪れたマルコ・ポーロも『東方見聞録』の中で町の繁栄ぶりに触れ、「広大で高貴な都市」と表現しています。

タブリーズは、イルハン朝、黒羊朝、白羊朝、そしてサファヴィー朝初期の首都となるなど、長い歴史の中で政治と文化の中心地として重要な役割を担ってきました。20世紀に入ってからはイラン立憲革命の中心地の一つともなっています。

現在は約140万人を擁するイラン有数の都市です。住民の多くはアゼルバイジャン人で、日常の会話ではアゼルバイジャン語も広く使われています。

02. タブリーズ絨毯の歴史

タブリーズは、ペルシャ絨毯における最も古い産地の一つと考えられています。現存する16世紀のペルシャ絨毯の中にも、タブリーズで製作されたと推測される作品があります。

タブリーズが長く交易都市として栄えてきたことは、絨毯文化にも大きな影響を与えました。東西からさまざまな文化や美術様式が集まり、それらを取り込みながら独自の意匠へと発展させていったことが、タブリーズ絨毯の大きな特徴です。 宮廷文化と結びついた精巧な作品だけでなく、ヨーロッパ美術やトルコ、コーカサスなど周辺地域の影響を感じさせる作品まで、非常に幅広い絨毯が作られてきました。

03. 多彩なデザインと色彩

タブリーズ絨毯は、そのデザインの多様性で知られています。ヨーロッパ調の優雅な花文様であるゴル・ファランギ・パターンから、コーカサス地方の影響を思わせる力強く荘厳なジオメトリック・パターンまで、その表現は実に多岐にわたります。

中央に大きなメダリオンを配した伝統的な構成、細かな花唐草、樹木や動物を描いたもの、人物や風景を表現したものなど、特定のデザインだけでは語ることのできない豊かな表現があります。

色彩についても、赤色や青色といったペルシャ絨毯の伝統的な色に加え、淡く柔らかなパステルカラーが多用されることがあります。緻密な文様と豊富な色彩を組み合わせることで、タブリーズ独自の優雅で華やかな世界が作り出されています。

タブリーズ 1970年代 1520×1020
タブリーズ 1970年代 1520×1020mm

04. タブリーズ絨毯とイズニック

タブリーズの地理的・歴史的背景を見ていくと、絨毯の意匠にはトルコ美術とのつながりを感じさせるものもあります。その一つとして興味深いのが、オスマン美術を代表するイズニック陶器との共通点です。

イズニック陶器は、15世紀以降のオスマン帝国で発展した陶器として知られています。画像などでは青を基調とした作品を目にする機会も多いのですが、特に16世紀の作品では、非常にはっきりとした赤色が重要な特徴の一つとなっています。 青、白、そして鮮やかな赤を組み合わせた花文様は独特の華やかさを持ち、16世紀のイズニック陶器は後にヨーロッパでも高く評価されるようになりました。

タブリーズ絨毯の中にも、こうしたイズニック美術を思わせる色彩や植物文様を見ることがあります。トルコとイランの文化が交差する地域に位置するタブリーズならではの美術的背景を感じさせる要素の一つといえるでしょう。

05. タブリーズの「ラジ」とは

タブリーズでは、絨毯の織りの細かさを表す基準として「ラジ(Raj)」という単位が用いられます。 ラジは、ナイン絨毯のLAのように絨毯を明確な等級に分けるためのものではなく、一定の長さの中にどれだけのノット列が入っているかを見るための基準です。

1ラジの基準 正確には6.65cmを基準として測ります
一般的な見方 約7cmの間に何列のノットが入るかを確認します
縦横で異なる場合 縦方向と横方向の数値を足し、2で割った数値を目安とします

例えば、一定の長さの中に50列のノットが確認できる場合には「50ラジ」、70列であれば「70ラジ」というように表します。数字が大きくなるほど、一つ一つの結び目が細かくなり、より緻密な文様を表現することが可能になります。

タブリーズ絨毯には非常に細かな作品も存在し、最高級品では90ラジ以上とされるものもあります。

ただし、ラジはあくまでも織りの細かさを知るための一つの基準です。当店ではラジだけでは正確さに欠ける場合があることから、基本的に1平方メートル当たりのノット数を測り、密度として表記しています。 絨毯の価値は織りの細かさだけで決まるものではありません。使用されている素材、文様、職人の技術、制作年代、保存状態などを含め、一枚の絨毯全体を見て判断することが大切です。

06. 絵画のような絨毯「タブロー」

タブリーズの作品を語る上で、もう一つ特筆すべきものが「タブロー」と呼ばれる絨毯です。

タブローは、一般的な絨毯のように花文様や幾何学文様を構成するのではなく、人物、風景、建築、動物など、ある場面そのものを絵画のように描写した作品です。

曲線や人物の表情、衣服、風景の奥行きなどを織りによって表現するため、非常に細かなノットと高度な技術を必要とします。タブリーズの優れた織りの技術を象徴する作品の一つといえます。

タブリーズ タブロー 1980年代 1423×1025mm
タブリーズ タブロー 1980年代 1423×1025mm

通常のタブリーズ絨毯とは異なる、まるで絵画を見るような細密な表現をご覧いただけます。 ちなみに「タブロー(tableau)」はフランス語に由来する言葉で、絵や絵画的な場面などを意味します。