鍋島段通

鍋島段通は、江戸時代に佐賀藩(鍋島藩)で生まれた、日本を代表する伝統的な手織り絨毯です。もともとは将軍家や大名家への献上品、あるいは藩主の御用品として織られていたもので、一般に流通することはほとんどありませんでした。そのため、現在でも「日本最高峰の段通」として高い評価を受けています。 鍋島段通の特徴は、極めて緻密で端正な文様構成にあります。文様は左右対称を基本とし、花菱文様、唐草文様、七宝文様など、格調高い伝統意匠が整然と配置されています。過度な装飾を避けた静かな構図は、日本美術特有の美意識を色濃く反映しており、見るほどに品格と奥行きを感じさせます。 素材には上質な木綿糸が用いられ、一本一本を丹念に手で結び、横畝(よこうね)と呼ばれる独特の織り目を持つ堅牢な仕上がりが特徴です。深紅、藍、生成りなどの落ち着いた色彩は、植物染料を用いたものが多く、時を経ることで柔らかな風合いと深みを増していきます。 鍋島段通は、もともと座敷や床の間といった格式ある空間で用いられてきましたが、現代では和室はもちろん、洋室やモダンな空間にも静かな存在感をもたらします。日本の美意識と高度な手仕事が凝縮された鍋島段通は、実用品でありながら、美術工芸品としても高く評価される特別な絨毯です。
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